審美的な歯の形とスマイルラインについて
最初に前歯の形がその人に合っているかどうかということが、大切になります。多くの方は歯の色に目が行くかもしれませんが、歯の色というのはどうとでもなるものです。
むしろ歯の形態の方が、その人の個性にとってはより重要なファクターになります。
歯の形と知情意
私がまだ歯科医になって間もない頃に、審美的な歯科治療で有名なT先生に教えて頂いた前歯の形態のお話があります。正面の前歯を1番として、隣が2番、糸切り歯を3番と私たちは表現しますが、上の前歯の1番はその人の知性を表し、2番は情の細やかさを3番は意思の強さを表しているということでした。
いわゆる知情意を歯の形になぞらえた訳です。最初にお聞きしたときは、私にはこじつけのように思えたものですが、それから多くの患者さんの歯を治療するようになって、確かに言い得て妙だと思うようになりました。
よく言われているのは、前歯の1番はその人の顔を上下反対にした形の相似形であるということですが、確かにそれはそうなのですが、同時に1番から3番が知情意を表すという事と矛盾するものではないと思っています。
例えば1番の歯の全体の形は、顔の形と関連しますが、先端の歯の長さや傾きが0.2-0.3ミリ違うと全く異なった印象を与えます。
もちろん、それらは歯の嚙み合わせの影響を受けますが、1番の歯の長さより少し短くなる2番や性別によっても異なりますが、3番の長さや形をどうするかで、口元から受ける、印象は相当に変わります。
歯の長さがと印象
歯の長さが少し長すぎると、人によっては、だらしない感じになりかもしれませんし、女性の場合は逆に情が増すかもしれません。こうした繊細さを理解した上で、当然ですが全体に目を向ける必要があります。
それはスマイルラインという名前で知られていますが、上の前歯の先端を結んだラインが、下唇のドライ‐ウェットラインに沿った曲線になっていて、ほほ笑んだ時に前歯がちょうどよく見えることをいいます。ただしこれは、あくまで一つの目安に過ぎません。
歯肉の位置や顎の形によっては、そもそもスマイルラインを与えることが無理なこともありますし、例えスマイルラインに沿った前歯にしたとしても、かえって不自然で、前歯が強調され過ぎて審美的には、失敗となってしまうこともあります。
余談になりますが、この「不自然さ」を感じる能力というのは、歯科医にとってはとても大切です。「個性」とひとことで言いますが、その人の内面の良さを引き出すことができるが、審美的な治療の醍醐味と言っていいのではないかと思います。