歯の審美的形成 【マージンラインについて】
歯に詰め物や被せ物をした時に、歯の部分と詰め物や被せ物との境目をマージンと言います。
マージンの形態や、どのような厚みを持たせるかは、歯に被せるものの材質や、歯の部位によっても異なります。ここでは、審美性に関係する前歯のマージンとマージンラインについて書いていきます。
前歯に被せ物をする場合には、色味を良くするためにも、また材質上の観点からも、十分なクリアランスが必要であると前に書きましたが、マージンにおいても
同様のことが言えます。
マージン部の形成の種類と形成場所
マージン部の形成には、大きく分けてショルダー、シャンファー、ナイフエッジなどの形態がありますが、前歯の場合はショルダーかもしくはディープシャンファー(ショルダーとシャンファーの中間のイメージ)の形成をします。
問題は、形成する場所なのですが審美的なことを考慮すると歯肉より下の部分、つまり見えない部分にマージンラインを設定します。そのためにジンジバルインスツルメントを使用して、歯肉を圧排しながら、歯肉を傷つけないように形成することになります。
このインスツルメントも何種類かあって、歯の大きさや部位によって使い分けますが、審美的はもちろん通常の歯科治療と同様に大切なのは歯周組織の健康具合です。
歯肉に炎症がある場合
仮に歯肉に炎症があるなら、歯肉下にマージンを形成する場合に、出血も多くなりがちで、正確な型どりをするのが難しくなります。また、せっかく歯肉下にマージンラインを置いたとしても歯肉の退縮によって、マージンラインが歯肉上に出てしまいやすくなります。
通常の経年的変化でも歯肉退縮は起こりますが、歯肉に炎症があるとそのリスクと程度は各段に高くなります。歯肉退縮が起こり、マージンラインが歯肉上になりますと、歯の神経がない場合や、修復物に金属が使われている場合は、ブラックマージンとなって、マージンや露出した歯の部分が黒っぽく見えてしまうことになります。
これは審美的にはかなり問題となります。
奥歯の場合はメンテナンスを考慮
奥歯の場合は、清掃性やメンテナンスの観点から、マージンラインを歯肉より上に設定することがあります。つまり、審美性よりもメンテナンスを重視した形成になり、さらに歯の神経が生きている場合は歯への形成時のダメージを少なくするために、クリアランスも必要最低限で、マージン部もシャンファーあるいはライトシャンファーにするなどします。
このあたりのことは、歯の部位、咬合、笑った時の歯の見え方など、個人個人の条件によって、使い分けしながら、その人の最善を見つけていくことが、肝心かと思います。ひとつ言えるのは、審美的なことも含め、歯肉(歯周組織)の健康と適切な咬合がまず第一で、そのあとにさまざまな治療が成り立つということかと思います。