審美的な修復で大切な事は
 
    適切なクリアランス
    マージンの位置
    精密な印象採得
 
 
 
 
 

  

審美的な修復で大切な事は
 適切なクリアランス
 マージンの位置
 精密な印象採得
 
 
 
 
 

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歯の審美的修復について

むし歯を削って、詰め物や被せ物をする。ごく当たり前に毎日歯科医院で行なっていることですが、そこで何を考え、どのような選択で、歯を削ったり、型を取り、被せ物をしているのか?案外、患者さんの知らないところで色々と考えていることを知っていただければ嬉しく思います。
 
 

 

 

審美性を高める歯の修復のポイント

むし歯の治療では歯にさまざまな被せ物や詰め物を行います。見た目ということも前歯の場合はとても重要になります。まず第一に重要なことは前歯に限らず歯の形そのものの形が解剖的に自然な形かどうかという問題があります。
 
 
解剖学的なライン

 
 
 
前歯の場合は顔の形との相似性などを考慮すると共に、下の歯を前後左右に動かした時の運動のガイドとしての機能的な役割を満たしているかなどもチェックします。また、口唇の審美ラインも考慮します。
 
 
 
笑顔

 
 
 
基本的には仮歯の段階で、解剖学的形態や機能的形態のチェックをしていきますので、歯の審美性のためにも仮歯はとても重要になります。
 
 
仮歯製作

 
 

 
 
 

【参考】
「歯科審美ってなに?」
一般社団法人日本審美学会
https://www.jdshinbi.net/general/esthetic-dentistry.html

 
 
 
 

1.歯の形成

歯を削る時には、被せ物の厚みを考慮すると同時に顎を運動させた時に、十分なクリアランス(スペース)があるかどうかを必ず眼で確認する必要があります。
 
最近は拡大鏡やマイクロスコープを使って形成することも多いですが、大きく見えるためにうっかりするとクリアランス不足になりがちです。ユーティリティワックスなどの道具を使ってクリアランスを確認することも一つの方法ですが、経験的にそれではクリアランス不足になります。
 
拡大鏡

 
 
慎重性がさらに求められる場合には、仮歯を作って実際に数日使ってもらいながら、咬合状態を確認する事もあります。クリアランスが不足しますと、被せた歯が以前の歯より大きくなったり、食事の時に破折したり、前歯の場合は特に歯の色の光沢が不足したりなどの問題が生じます。
 
 
メタルボンド歯

 
 
前歯の場合は、被せたものがより自然に見えるように、マージン(被せ物と歯との境目)が歯肉の下に隠れるように、ジンジーバル・インスツルメントという器具を使用して、削る際に歯肉を0.5-1ミリ押し下げて形成します。こうする事で、境目が分からなくなります。
 
 
ブラックマージンの歯

 
 
ただ、注意しなければいけないのは、せっかくこのように丁寧に形成しても被せ物に金属を使用してしまうと、金属がイオン化して歯肉を黒ずんだ状態にしたり、歯肉が下がった場合にブラックマージンとなって見苦しい状態になるということです。
 
マージン

 

 
 
 

 2.歯の印象採得

歯の印象採得(歯の型を取る事)はより精密に印象したい時はシリコン印象材を使用しますが、通常は寒天+アルジネートを使う印象が多く行われています。
他にも歯に動揺歯がある場合、シリコン印象材ですと動揺歯を痛める場合があり、そうした場合は寒天+アルジネートを使った印象を行います。
 
シリコン印象

 
 
印象採得で重要なのは、マージンをはっきりと印象する事ですが、その時に歯肉から出血があると正しい印象が取れません。そこで止血処置が必要になります。これには、ジンパック(細いひも状のもの)を使った止血法や薬剤を使った止血法があり、またそれらを併用する方法などがあります。
 
 
しかし前提として、歯肉が健康な状態である事が重要です。つまり、ブラッシングやスケーリングなどの歯周病の初期治療をしっかり行い、歯周組織が健康な状態であることがいい被せ物にとっても大切です。
 
印象採得

 

 
 
 

3.被せ物の材料について

現在はメタルフリーの歯科治療が可能な時代になりました。金属並みかあるいはそれ以上の強度を持ち、見た目も美しい材料が開発されてきたのです。金属アレルギーの心配がある方のみならず、審美的な観点からもメタルフリーが望ましいと思います。
 

 
 
メタルを使用しなければ、仮に歯肉が下がったとしてもブラックマージンにはなりませんし、金属の腐食による歯質の劣化も避けられます。メタル以外に使う材料はレジンやジルコニア、セラミック、グラスファイバーなどになります。材料につきましては日進月歩のところがあり、いずれはメタルフリーが当たり前の時代になるかもしれません。

 
メタルフリー補綴物

 

精密な印象採得

歯を削ったあとは型をとります。ここでは2ステップで行う シリコンを使った精密印象をご説明します。
 
①シリコン印象材による一次印象。この一次印象で歯の概形の型を取ります。そうすることで、二次印象を取るときに型枠のトレーのブレがなくなると同時に、二次印象材が細かいところまで流れて行きます。
 
②一次印象に流動性の高い二次印象のためのシリコン材をついで行きます。
 
③一次印象と二次印象により精密に印象をとり、シリコン印象材に適した硬石膏か超硬石膏を注いで模型を作ります。
 

 
例1
下の写真左がシリコンによる精密印象材と超硬石膏で作った歯牙模型です。写真右が、寒天+アルジネート印象材と硬石膏で作った歯牙模型です。模型にはまだ寒天の一部が残っていますが、寒天の部分で細かい部分の印象がとれます。
 

 
印象材と石膏の組み合わせは、より狂いのない作業模型を作るために重要です。シリコンによる精密印象材は常温でも変形が少ないですが、寒天+アルジネート印象材は乾燥や常温によって変形しますので、印象をとったら冷水に浸しなるべく短時間のうちに石膏を流す必要があります。
 
冷水

 
 
石膏はバイブレーターなどを使用して、気泡が模型に入らないように注意しながら慎重に注ぎます。このようにして、形成した歯を再現した模型が完成するわけです。
 
 

補綴物(技工物:詰め物や被せ物)について

歯の豊隆部が自然な歯列に沿った状態であり、頬側や舌側に張り出し過ぎないことが重要です。ここの形態が不良ですと頬っぺたを噛んでしまう原因になります。また、補綴物に裂溝が付与されることで、食物の遁路が確保され、食べやすくなると同時に、補綴物に余計な不可がかかるのを防ぐ働きがあります。
 
補綴物模型

 
歯を部分的に覆う形の補綴物の場合は、歯牙と補綴物のマージンが滑らかに移行していることが必要です。ここの適合が悪いと二次う蝕の原因となります。また、セメントが溶け出し補綴物が脱落する原因にもなるので注意が必要です。  
 
歯の溝

 
歯牙の先端の口頭の形態は特に犬歯では、側方での咬合を誘導する際に重要な役割をしますが、先端近くでの当たりが強過ぎますと、先端が破折する原因になります。特に上顎の小臼歯では最悪の場合は歯牙破折の原因にもなりますので、側方運動時に強く当たり過ぎていないかを咬合紙を使って調べると同時に必ず指を当てて触診によるチェックも行います。
 
先端の形

 

歯科医師、歯科衛生士に特に必要だと思うこと

バランス感覚と審美的センス

歯科医術も外科的な技術である以上、センス(物の微妙な見極めができる能力)や総合的な判断力が求められます。それをどのように培っていくかは、人それぞれのやり方があると思います。
 
美しさやシンメトリーに対して敏感であること、0.2〜0.5ミリの違和感を感じられること、つまりは自然に対する感性があるかどうかということになります。
 
患者さんの口腔内を見て、新米の歯科医師や歯科衛生士だけでなくベテランの方でもむし歯やプラークに気が付かないということは、よくあることです。こちらには見えているのですが、探そうと思わないと見えない世界というのはあるのです。
 
 院長と勤務医

 
 
その人にとっての自然さというのは、歯を噛み合わせた時の音や顔の筋肉の状態、表情、目の動きなど、さまざまなサインで教えてくれるものです。さらに患者さんが気が付いていないところを事前に察知して初めて、歯科医師や歯科衛生士としての入り口に立てるのだと思います。
 

 
 

お問い合わせ TEL 027-320-2418